2018/12/18

4歳児のケンカから

ただ泣いて、怒るだけじゃない

竹の子幼稚園の園庭で繰り広げられる、子どもたちの賑やかな遊び。その様子を見ていると、心がほっこりします。そんなある日のことです。すべり台の辺りから「わぁー!!」という泣き声とともに、子どもが取り合いをしていました。押したり、たたいたりが始まったので、すぐに駆け寄りました。

互いの思いをぶつけあう

間に入って話を聞くと、Hくんが「Rくんが僕の◯◯を取った!!」と言って、泣き怒っているのです。Rくんに聞くと「1個だけだよ、1個だけだよ」「Hくんは、まだいっぱいあるよ……」と続けます。そこへMくんがやって来て、2人のやり取りに入ってきました。そして「Hくんも僕のを取ったことあるよ」と言いだしました。今は、HくんとRくんの問題を話しているはずが、3人が3人とも「取った! 取られた!」という思いを話し始めてしまいました。
そのまま話を聞いていると、Mくんの登場で少し冷静になったHくんが「あーあ、Rくんに◯◯を見せなきゃよかった……」と言い始めました。するとRくんも「1個だけならいいかと思ったけど……」とモジモジし始めました。 Mくんが「1個ちょうだいって言えばよかったのに……」と付け加えてくれました。

「あっちへ行こう」「向こうがいいよ」
「あっちへ行こう」「向こうがいいよ」

それぞれの気持ちに寄り添う保育

子どもたちの気持ちも落ちつき始めたので、私にくっつくように立っているHくんへ話しかけてみました。「Rくんも、Hくんを怒らせたくて◯◯を取ったわけじゃないみたいだね。Hくんがいっぱい持ってたから、いいかなあと思っちゃったみたいだね」「でも『一個ちょうだい』と言って『いいよ』と言ってもらわないとね」。するとHくんは「うん、うん」とうなずき、再び涙があふれてしまいました。私は「Rくん、今度は『かして』とか『ちょうだい』とか言ってね」と、Hくんの気持ちを代弁しました。
Rくんが「わかった、ごめんね……」と言ってくれたので、Hくんは涙を手でぬぐいながら、小声で「1個あげる」と言って、このケンカは終わりました。子どもたちを、ぎゅっと抱きしめて「これで今日のケンカはおしまいにできるかな」と声をかけました。すぐに、にっこりとはいきませんでしたが、じきにまたそれぞれの遊びが始まりました。

ケンカも年長さんへのプロセス

友だちといるからできる経験
友だちといるからできる経験

互いの思いと思いが食い違って起こる、友だち同士のケンカ。ときに手が出ることもありますが、泣きながらも自分の思いを伝えられたり、それぞれの思いを互いに聞けたりするようになってきます。これが4歳児の育ちの姿です。
大切なのは、自分の思いを出せること。その上で大人が互いの意見を整理すれば「ああ、そういうことだったんだ」と落ち着いてきます。相手の気持ちにも気づくことができるようになっていきます。友だちの話を聞く、気付く、納得する、という経験を積み重ねていくのです。相手の考え方や気持ちを考えながら自分の意見も言葉にしたり、互いの意見を尊重し合えたりすることにつながります。こうして5歳児の仲間集団へと育っていくのです。

ホームへ先頭へ前へ戻る