2019/8/20

何かあったら困るので

「何を大切に安全な環境をつくるのか」を考えたい

近年、若手の教育研究者として言動が注目されている、玉川大学教授・大豆生田(おおまめうだ)啓友先生のお話を聞く機会がありました。西川正著の『あそびの生まれる場所』(ころから株式会社 2017)に記されている「『何かあったら困るので……』は、遊び(心)を消す魔法の言葉」ということを引用しながら話されました。

安全性ばかりが強調される時代

園庭の遊具
園庭の遊具

本書は、関東地方で大雪になった年に親子で雪遊びをしようと、おやじの会のメンバーが小学校の校庭に集まり、滑り台やかまくらを作ったところ、教頭先生から何度も「何かあったら困るので」やめてほしいと注意を受けた話から始まっているようです。こうした話は、実際にもよく耳にします。
この「何かあったら困るので」には「子どもたちにケガをさせては困る」と「苦情があると困る」というふたつの側面があるとも述べられています。この辺りは大変興味深く、私の耳はダンボでした。
つまり、その背景には責任問題があり、ルールや禁止事項の強化、利用者の「お客様化」を進めているのだと本書は訴え、その処方なども記されています。安全性ばかりが強調される時代です。そこを最優先にする風潮も広がり始めている事実もあります。

時代に逆行する竹の子幼稚園の遊び環境

1週間程度、竹の子幼稚園の2階テラスから園庭における子どもたちの遊びっぷりを眺めてみました。登る、飛ぶ、ぶらさがる、こぐ、走り回る……。まるで、安全性が強調される時代に逆行するような遊び環境です。
子どもたちは実にのびのびと遊んでいます。砂場では水もたっぷり使い、必要な道具を子どもたち自身がどんどん使います。そして何より、3〜5歳の子どもたちが年齢制限なく遊びに挑み、夢中になっています。

ある日の園庭の様子
ある日の園庭の様子

保育者たちは、自分のクラスの子どもたちだけという関わりではなく、その遊びに参加している子どもと共に過ごします。つまり、園庭で遊ぶすべての竹の子幼稚園の子どもたちの先生になっているのです。
園庭の柿の木の下には、うんていがあります。新年度がスタートしたころは、年長児を中心にうんてい遊びが繰り広げられていましたが、5月の後半ごろからは年中・年少児も大勢チャレンジ。
ブランコでは、年少児が足を伸ばしたり縮めたりして、自分でこぐことを覚えました。年中・年長児が立ちこぎや二人乗りをするのをチラチラと見ながら、少しでも大きくこげるよう一生懸命です。
しかし世間一般的には、3歳まではブランコはダメ、4・5歳児も立ちこぎや二人乗りはダメといったルールが、幼児教育現場に広がり始めています。ブランコのない幼稚園も増え始めているのです。

挑戦できる環境が非認知能力を開花させる

土管の上が気持ちいい
土管の上が気持ちいい

ある日のことです。砂場にある大きな土管の上に、年長・年中の3人の子どもが気持ちよさそうに座っていました。そこへやってきた年少のCくんは、同じように土管の上に登ろうとしますが、うまくいきません。しばらくすると砂場のバケツを1つ2つと運んできて、ひっくり返して重ねたところへ乗って土管に登りました。自分なりの登り方で成功したときに「ドヤ顔」をする姿は、何とも自信に満ち溢れています。
これは「3歳だからダメ」ではなく、少しスリリングな環境があり、大人の決めたルールでしばられていないからこそ見られる、成長していく姿だといえるでしょう。自分で自分の体を自由に動かし、いろいろなことに挑戦できる環境こそ、非認知能力を開花させていく育ちの場であろうと改めて思います。「何かあったら困るので」を優先させるのではなく「何を大切に安全な環境をつくるのか」を考えていきたいものです。
子どもを真ん中に保護者のみなさんとしっかりと連携して、力を借りながら幼稚園が「子どもの大事な場所」になることを心から願うものです。

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