2019/11/19

文字の世界へ

遊びとしての「文字」から、人に伝える手だてとしての「文字」へ

幼児期は、絵本や物語に触れ、家族や地域社会での生活を通して、それぞれのタイミングで「文字の世界」への扉を開いていくのでしょう。

遊びとしての「文字」

絵本を囲む子どもたち
絵本を囲む子どもたち

年長になると、マーカーの色が増えます。5月のある日「さぁ、今日からこれが使える……」と4人の女の子が額を寄せ合い嬉しそうな真剣な表情をしていました。近くにそっと寄って、聞き耳をたててみると「みどりいろ、きいろ、あかいろ……」と色の名前を言い合って、それぞれマーカーを箱から出しては確かめ合っていました。
そのうちの一人が、広告の裏白紙を4枚持ってきました。そこに色の名前をその色のマーカーで書くという遊び(?)が始まりました。書ける文字と、読めるけど書くことはまだうまくない文字があります。ところが大発見です。色の名前のお尻はだいたい「ろ」。「ろ」は4人ともとてもうまく書けていました「ろ、ろ、ろ、ろ……」と小さな声のハーモニー。こんなふうに文字で遊べる時代っていいなと感じました。

人に伝える手だてとしての「文字」

年長児は、お母さん・お父さんへのプレゼント製作でメッセージカードを作ります。それぞれ手紙を書くのですが、思っていることや書きたいことはいっぱいあっても、なかなか書けません。私たちが個々に関わり合いながら、子ども同士でも助け合いながら時間をかけて作り上げます。
「『は』ってどうやって書くの?」「『あ』がめちゃくちゃになっちゃった」などと言いながらも、書けないからといった悲愴感はありません。五十音表を貼り出したり、文字を組み合わせて遊べるような文字カードを用意したり、文字環境も準備します。

気持ちを伝えるということ
気持ちを伝えるということ

子ども同士の関わりが安心感につながる

ある朝の時間、年長のMちゃんが「おかあさんだいすき。だいだいだいすき」となかなかの長文を書いていました。そばで同じように書こうとしていたTくん。「おか」までは何とか書いたのですが「あ」がどうしても書けずにいました。そろそろ助けようかなぁと思っているところへ、Kくんが登場。

絵本の貸し出し
絵本の貸し出し

「これを見ながらだと字がわかるよ」と自分がいま図書室で借りてきた『あっちゃんあがつく〜たべものあいうえお〜』の絵本を持ってきてくれました。そして「『あ』だったら、ここを見ればいいんだよ」とそのページを開いてくれました。他の子も寄ってきて、テーブルの上の絵本を囲んで話がはずんでいました。私の出番はすぐにはありませんでした。こうした子ども同士の関わりは、安心感につながります。「書けない」という緊張がスーッとやわらぎます。
数日後、Tくんが「ぼくかけるようになった」と、広告の裏白紙のところに「自分の名前、家族の名前、幼稚園の名前」を書いて持ってきてくれました。「おばあちゃんに教えてもらったんだもん!」と嬉しそうに話してくれました。

子どものワクワク感をじっくりと育む

心身の育ちの中で、遊びとしての「文字」から想いや感情をのせて人に伝える手だてとしての「文字」へと、次第に世界が開けていくようです。幼児期は、一人ひとりの文字への興味や関心の芽を、周りの大人が慌てることなく、子どものワクワク感をじっくりと育むことが大切だと感じています。
2学期・3学期の年長児は、絵を描いたり作品を作ったりしたら、自分で名前を書きます。枠内からはみ出さないように、ゆっくりていねいに書こうとする気持ちも育ってきています。
指人形を使ってのグループ活動では、人形劇の台本作りをします。自分たちでセリフを考えて書いていくのですが、当事者しか読めない部分もあります。しかし、5〜6名で話し合いをして、セリフを考えながら文字にしていく様子に、もうすぐ小学生になっていく姿を感じました。行きつ戻りつしながら、子どもは必ず育っていきますね。

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