2019/4/16

おっきくなるって!?

K君のひそひそ話で気づいたこと

おっきくなってないみたい

入園、進級の季節になると思い出すエピソードがあります。
新年度が始まって2週間ほどたったある日のこと。年中のK君に呼びとめられました。そしてひそひそ声でこう話してくれました。「園長先生、Kねぇ、背おっきくなってないみたい……」
まだ、どのクラスも身体測定をしてないし、何のことを言ってるのかわからなかったので、私はポカンとしてしまいました。その表情にKくんは納得いかなかったのでしょう。少し声のトーンが上がり「あのね、〇〇バスのつくし組のAちゃんとおんなじくらいなんだ……」としょんぼりした表情で話をしめくくったのです。

みんな乗ったかな?
みんな乗ったかな?

おっきくなるんだ……

私はハッとしました。春休みが過ぎると自分が少し前までいた保育室が、小さいクラスの新しい子どもでいっぱいになります。自分は年中のクラスになります。Kくんもきっと多くの大人たちから「ひとつ大きいクラスになったね……」と励ましの声をかけられ、新学期を迎えたことでしょう。Kくんは「大きくなる」ということに、少し期待もしていたのだと思います。4月になってひとつ上のクラスになると「おっきくなるんだ」と……。
でも、幼稚園が始まっても自分自身が「おっきくなった」気がしません。みんなは「大きくなった」と言うけれど……という戸惑いと、ちょっと期待していたのに、同じバスの新入園のAちゃんと背は同じくらいという複雑な感情が入りまじったのでしょう。私は一瞬、年中の子どもたちが、年長ほど進級を大はしゃぎしないことを思い出し、その心もちに触れたような気がしました。

おっきくなったよ!

お兄ちゃんだから
お兄ちゃんだから

Kくんにかける言葉をいろいろ考えながら「大丈夫、Kくんは△△組になったんだから、これから少しずつ大きくなるんだよ。背もきっと伸びてくるよ。それから大きくなるのは、背だけじゃなくて、心もなんだよ。心は見えないからね……」
と話しました。後々まで様々なことを考えさせられたKくんの言葉でした。
子どもたちは、自分の成長をどう実感するのか。その実感を得るためにどんな援助ができるのか。私たちの言動はどんなときも、子どもたちの育ちに影響を与えるんだなぁと改めて思いました。新しい一年を迎える時期、子どもたちが満面の笑顔で「おっきくなったよ!」と話しかけてくれるような温かな環境で、子ども自身が納得して育っていけるよう努力したいと思います。
保護者の皆さんの気持ちもお聞かせくださいね。

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